「兼続殿、助けてください!! 三成殿が格好良すぎてもう何も手に付かないのです…!!」 「ははは、それは大分キているな」 こっち向いてダーリン☆ 「兼続殿! 真剣に聞いてください!! 私は本気なのです!!」 「それはそれで大問題な気がするがまあいい。 何か相談事があるなら聞こう」 兼続は目の前の友人をとりあえず諭した。 幸村はその反応に落ち着いたのか、ひとまず座り直した。 直江兼続には2人の友がいる。 一人は目の前のこの黒髪の青年、真田幸村。 元来の生真面目な性格と丁寧な物腰から、兼続は弟のようにかわいがっていた。 そしてもう一人がこの場にはいないが既に話題となっている石田三成。 清廉潔白で敵を作りやすい人物ではあるが実際は優しい心の持ち主だと兼続は知っている。 …で、ここからが問題だ。 今その中で兼続の友・幸村がもう一人の友・三成に懸想しているというわけで。 「それでは幸村、まずは三成のどこに好意を抱いているのか教えてはくれないか? お前の真剣さを知りたいのだよ」 「え…あ…はい」 そう問われた幸村は今までの勢いを失い、照れたように口ごもる。 「その…あの、お美しい茜色の髪も、造形の整ったお顔も本当に素敵だなあって思うのですが、えぇと…やはりあの崇高な志と純粋な心も…本当に“三成殿”の全てをお慕いしております…」 「ふむ、案外普通だな」 「いいえ兼続殿!! 私の三成殿へ対する思いはこんなものではありません!!!」 すると突如幸村は先程までのおずおずとした様子から一変、勢い込んで兼続の相槌をぶった切った。 最初この部屋へ入ってきた時の勢いが帰って来たようだ。 「普段冷たい方と見られがちな切れ長のあの瞳! しかしその一方で時折あのようにお優しく微笑まれたらもう…!! 惚れるしかありません!!!」 「お、フィルターがかかったな」 「まだあります!! 繊細でしなやかにも関わらず綺麗に筋肉の付いたあの指先も! お仕事中に髪をさらりとかき上げるあの仕草も…!! 私の心を乱すのですっ…!!」 「何だか段々マニアックになってきたぞ」 何やら大分自分の世界に入ってきている幸村。 そして自分から言わせておいて暴言を吐く兼続。 残念ながらこの場に二人に対してそれぞれツッコミの出来る人間は存在しなかった。 でもまあ、と兼続は話題を戻す。 「ふむ、とりあえずお前の本気はこちらに伝わったぞ! それで、幸村はそんな三成ともっと親交を深めたいと。 そういうことで良いのかな?」 「…はい」 幸村はもう一度しおしおと俯いた。 指先をもじもじと動かしながら困ったように言葉をつむぐ。 「三成殿とこのように友という関係になれたこと、兼続殿のおかげです。 本当に感謝しております。 ですが私は…その…もう少し、三成殿とお近づきになりたいのです…」 あああお恥ずかしいっ…!!と幸村はぼふんと音を立てて真っ赤になった顔を両手で覆った。 自他共に認める愛の幅の広い兼続は、友同士(しかも男)の恋を特に気にすることなく、むしろ微笑ましく見守った。 「なるほどな。 しかし幸村、それならば何もこのように作戦など立てずとも、ただ単に訪ねて行って話をするだけで十分ではないか? 三成はあれでいてお前のことをかなり気に入っている。 お前が行けば喜んで相手をするだろうに」 兼続の問いはもっともな話だった。 知り合いでないのならまだしも二人は友人なのだ。 話がしたくなった、という理由だけで会いに行くことは別に不思議なことではないだろう。 だがそんな兼続の言葉に、幸村は赤らめていた顔のままで混乱しながら声を荒げた。 「ふふふ二人だけで話しっ!!?? むむむ無理です絶対に無理ですそのような大胆なコトっっ!!!」 …大胆か?という兼続の常識的な疑問にも大仰に返事をする。 「大胆です! 一世一代の大仕事です!! 兼続殿もご存知でしょう!? 三成殿のあの透き通った琥珀色の瞳をっ…!! あの美貌と向かい合うだけでも困難だというのに目を見つめ合ってなどとっ…!! 私は射殺されてしまいますっ!!!」 「急に言葉遣いが物騒になったな。 射抜かれるということか?」 「ですから兼続殿っ…私には無理です荷が重過ぎますっ!!」 「予想以上にお前の三成に対するフィルターは厚いようだな。 私も予想外だったよ。 しかし…」 むぅ…、と兼続は腕組みをしながら難しい顔で首を捻った。 「二人きりになって親交を深めたいが近すぎるのも話をするのも駄目なのか。 意外にワガママさんだな」 「うぅ…すみません」 申し訳なさそうに幸村は兼続に深々と頭を下げる。 そして情けない声で続けた。 「ですが私の我儘はともかく、実際三成殿のお体のことが心配なのです…。 三成殿は最近お仕事がお忙しいようで、ご自分のお体を顧みていらっしゃらないのではと…。 少しでも気分転換をして頂こうと、外にお誘いしたいとも考えているのですが…」 「うーむ、あいつは元々出不精だからなぁ。 遠乗りはさほど乗り気にはなるまい」 「そうなのです…。 わたしが動き回る分には良いのです! ですが三成殿をご休憩でお疲れさせるわけにもいかず、でもお部屋にこもられてもお体に良くないと考えると…」 しゅんとする幸村。 しかし兼続は友・三成のことを心から案じている様が見られる幸村を好ましく思った。 そして満面の笑顔で笑ってみせると、幸村の肩をぽんと叩き、自信満々に言ってみせた。 「うん、大丈夫だ幸村! 任せておけ! この直江山城、全身全霊をもってお前達を繋いでみせよう! @二人きりで、A近過ぎず遠過ぎず顔を付き合わせすぎず、B三成が疲労することなく外に出られる、C気分転換できる方法、だな! 一つ思いついたぞ!!」 そんな兼続の言葉にぱあっと顔を輝かせて幸村は喜んだ。 「ありがとうございます兼続殿!! してその方法とは…」 「うむ、その方法とはな…」 + + + そして後日。 「三成殿っ!! 私と『だるまさんがころんだ』してくださいっ!!」 「…はぁ?」 幸村の片思いが実るのはいつのことやら。 end. なんかいろいろすみません(主にキャラ崩壊とかキャラ崩壊とか)。 2007.03.16up |